リロケーションで一時的に
不動産を貸したい方に有用です。
定期借家契約のメリットや注意点についてご説明します。
定期借家契約とは
「定期借家契約」とは、物件に住める期間が決められている賃貸借契約です。例えば「契約開始日から○年間のみ」、「20XX年●月まで」というように、その物件に住むことが出来る期限があらかじめ決まっています。期限の到来とともに原則、契約は終了しますので、「転勤している期間だけ物件を貸し出したい」「5年後の建て替えまで貸し出したい」など、オーナー様のご希望やご要望を叶えられます。
普通賃貸借契約との違い
物件に住める期間の定めがある
賃借人が解約の意思を示さない限り物件に住み続けることが可能な「普通賃貸借契約」に対し、「定期借家契約」は物件に住める期間が限定されています。このように「期間満了時に契約を終了させられる」点が特徴であり、普通賃貸借契約との明確な違いになります。
1年未満の契約でも有効
「普通賃貸借契約」の場合では、借地借家法の規定に基づき、「期間の定めがない賃貸借契約」と見なされ、1年未満の賃貸借契約期間を定めることは出来ません。一方、「定期借家契約」では例外として1年未満の契約期間でも有効に定めることが認められています。(借地借家法第38条1項)
借地借家法 第29条
(建物賃貸借の期間)
期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
出典:借地借家法
書面による契約に限る
普通借家契約は「書面による契約でも、口頭による契約のいずれでも可」であるのに対して、定期借家契約は公正証書等の書面で行う必要があります。また、賃貸人は更新がなく期間の満了により終了することを契約書等とは別に交付することが義務付けられています。
借地借家法 第38条
(定期建物賃貸借)
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
5 建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
出典:借地借家法
定期借家契約のメリット
「普通賃貸借契約」の場合では、借地借家法の規定に基づき、「期間の定めがない賃貸借契約」と見なされ、1年未満の賃貸借契約期間を定めることは出来ません。一方、「定期借家契約」では例外として1年未満の契約期間でも有効に定めることが認められています。(借地借家法第38条1項)
定期借家制度では、契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了するため、契約期間・収益見通しが明確になり、経済合理性に則った賃貸住宅経営が可能となります。このようにオーナー様の「希望される時期に賃借人に退去してもらえる」ことが、定期借家契約の最大のメリットと言えます。
- 数年間で戻る予定の転勤の期間だけ賃貸で
貸し出したい - 経年劣化に伴う老朽化により取り壊しや建て替えを
計画しているため、期間限定で貸し出したい - 将来的な再開発構想などにより、ご所有物件の撤去や立ち退きを迫られる可能性があるため、期限を決めて貸し出したい
定期借家契約では、期間満了により契約は終了するため更新はありませんが、賃借人から再契約の希望があった場合は双方合意のもと、再契約も可能です。再契約時に、改めて契約期間を定めることができます。
定期借家契約の注意点
オーナー様にメリットの多い「定期借家契約」ですが、注意点もあります。
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- 適切な家賃設定
- 期間満了により終了する定期借家契約では、家賃設定に注意が必要となります。普通借家契約のように、同エリアの類似物件に合わせた近隣相場による家賃設定では、賃借人の入居(客付け)が厳しくなりがちです。賃借人にとって制限となる「期間限定」であることを前提に、それでも納得していただける適切な家賃設定が求められます。
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- 客付けが難しくなる場合もある
- 契約期間を短く設定するほど、客付けも難しくなります。契約期間を1年未満などに設定した場合には、ニーズもかなり限られてきます。スムーズな客付けに向けて、「定期借家契約」の特徴を、賃借人の視点から捉えることも大切です。
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- 1年前〜6ヵ月前までに賃貸契約
終了の通知が必要 - 定期借家契約の期間が1年以上の場合には、賃貸人は賃借人に期間満了の1年前から6ヵ月前までに、「期間の満了により賃貸借契約が終了する」旨を通知する必要があります。もし通知を忘れた場合には、契約期間満了となっても明け渡しを求めることができませんのでご注意ください。
- 1年前〜6ヵ月前までに賃貸契約
定期借家契約のQ&A
- Q.01 定期借家契約はどのような特徴がありますか?
- 普通建物賃貸借では、正当の理由がない限り賃貸人からの更新拒絶はできません。一方、定期借家契約は契約で定めた期間の満了により、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する制度です。
定期建物賃貸借では、契約期間、収益見通しが明確になることで、賃貸住宅経営の事業収益性の改善や不確実性の低減が見込めます。
- Q.02 定期借家契約において、契約期間の満了にともない必ずその借家を出ていかなければならないのでしょうか?
- 定期借家契約では、契約で定めた期間の満了に伴い確定的に契約は終了しますが、賃貸人と賃借人の双方の合意により、改めて再契約が可能です。
- Q.03 定期借家契約はどのような流れで結ぶのでしょうか?
- 定期借家契約は、契約期間を定め、公正証書などの書面により契約を締結し、賃貸人が契約書とは別に、契約の締結前に事前説明文書を賃借人に交付し事前説明を行うことが必要になります。
- Q.04 定期借家契約を結ぶ際に行う事前説明は、どのような書面にすべきでしょうか?
- 定期借家契約であることを、賃貸人が賃借人に対して書面で説明する義務があります。契約の更新がないこと、期間満了により借家関係が確定的に終了すること、契約の終了年月日などを具体的に記載します。その後のトラブルを未然に防ぐためにも、大切な書面となります。
- Q.05 賃貸人の仲介をしている宅地建物取引業者が「重要事項説明」として、「定期借家契約を結ぶ前に書面を交付して行う説明」と同様の説明を行った場合は、賃貸人から賃借人への説明が行われたことになりますか?
- 「重要事項説明」は 仲介者としての宅地建物取引業者が行うものです。一方、「定期借家契約を結ぶ前に書面を交付して行う説明」は賃貸人自らが行うものになります。説明すべき主体が異なるため、「重要事項説明」を行っただけでは、「定期借家契約を結ぶ前に書面を交付して行う説明」をしたことにはなりません。
なお、仲介者が賃貸人の代理人として「定期借家契約を結ぶ前に書面を交付して行う説明」をすることが可能です。仲介者は、それぞれの立場でそれぞれの説明を行う必要があります。
- Q.06 賃借人から「中途解約の申入れ」は出来ますか?
- 居住の用に供する床面積200㎡未満の建物については、1か月前に申し入れを行うことで解約することが出来ます。また、これより長い中途解約の申入れ期間を特約で設けるなど、賃借人に不利な特約は無効となります。
- Q.07 期間満了に伴い、再契約をせずに賃貸借を終了する場合は、どのような流れになりますか?
- 賃貸人は賃借人に対し、期間の満了により定期建物賃貸借が終了する旨の通知義務があります。契約期間が1年未満の場合は通知の必要はありませんが、契約期間が1年以上の場合は期間満了の1年前から6か月前までの間に行う必要があります。
- Q.08 通知期間内での通知を忘れて、通知期間経過後に通知した場合は、どうなりますか?
- 賃貸人が通知期間での通知を忘れてしまい、通知期間経過後に通知した場合は、「その通知の日から6か月間は、賃借人は建物を引き続き使用することが出来ます」が、「その通知の6か月後には契約を終了することが出来ます」。
- Q.09 平成12年3月1日前に結ばれた契約を、同日以後において合意の上解除して引き続き同じ建物について定期建物賃貸借契約を結ぶことはできないのですか。
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居住用の建物については当分の間、合意しても定期建物賃貸借契約を結ぶことはできません。合意解除して定期建物賃貸借契約を結んだとしても、その契約は従来の正当事由による解約制限のある借家契約となります。ただし、居住用以外の建物については、従来の借家契約を合意の上解除し、新たに定期建物賃貸借契約を結ぶことはできます。
引用:国土交通省「定期建物賃貸借Q&A」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000060.html